Wed.

道の端に倒れて応えなき人に


道の端に倒れて応へなき人に子を負ひし妻はすがり呼びかく


事故の後血の色乾く国道を速きバイクは連なりて過ぐ



05:07 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Wed.

熱いでて


熱いでて吾が臥しをれば思はざる重荷となれり動けぬ姑は


冬の日も病めれば長し学校を退けくる吾子をひたすらに待つ


熱いでて臥しをれば子が帰り来て厨
(くりや)にたつる音に安らぐ



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00:22 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Mon.

よき位置と思ひて


よき位置と思ひて付けし掛け鏡屈みて覗く子らとなりたり


(つま)も子も励みてをらむ
        むさぼりし午睡
(ごすい)覚むれば罪のごとしも


音荒き部屋を覗けば体操を習ひゐる娘
(こ)は逆立ちしをり


街灯の明り及べるわが部屋の月夜も闇もなきをわびしむ



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19:01 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Thu.

散髪


雨止まずこもりゐる午後時かけて夫と子の髪わが刈りてやる


バリカンにのりくる髪のかさばりて刈りやれば子の首長く出づ


夫の髪刈りてやりつつまた少し白毛のふへしことにはふれず



作者35歳の時の作品です。父(当時47歳)と兄(当時16歳)の髪を切った日です。
兄の髪を切り終わって母が、「首がずるんと長く出たねぇ」と言って笑ったのを覚えています。

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06:16 | 雑詠 | comments (2) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Fri.

薬の香口に残りて


欠けし歯に唇の内触るること気にかけながら二月は過ぎぬ


薬の香口に残りて歯医者より帰りてすする粥はわびしも


独り居も楽しからずや繰り返し声出だし読む毎日歌壇



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02:08 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Fri.

ためらひ永く


わが白毛
(しらが)抜きくれ乍(なが)ら下の子は黙す間もなく友の話す


幾度
(いくたび)も白毛染めよと娘(こ)のいふにためらひ永く日を過しをり


光線の明るきときは茶色にも見えて染めたる髪になじめず


茶髪などなかった昭和40年代の作品です。
一句目では、母は32歳、私は10歳でした。
ニ、三句目は、その4年後の作品です。
当時の母には、髪を染めるに対してよほどの抵抗があったようです。
私が何気なく、髪染めればいいじゃない、と言った言葉が、
それほどに母を悩ませたとは露知らず、申し訳ないことをしました。

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08:10 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Sun.

金魚


積む雪の漸
(やうや)く解けし庭池に生きて金魚の赤き色見ゆ


そう言えばかつては庭に池がありました。
この金魚は夏祭りにでも兄か私が買って来たのだったか…。
この句、私はとても気に入っています。

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05:28 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Tue.

わが身の肥えて


農離れ家ごもる日々いたづらにわが身の肥えて着る衣小さし


農作業の無い冬の間は家にいることが多く、体を動かすことが少ないから太って困る、
とこぼしていた母を思い出します。この歌を詠んだ時、母は35歳でしたが、
毎年毎年冬には同じことを言っていたような気もします。

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22:17 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Sun.

鳴き交はす小鳥の声に


ガラス戸に雪降る影の見えながら空の明るき四月となりぬ


鳴き交はす小鳥の声に目覚めゐて起きるに早し楽しみて聞く



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16:30 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Sat.

休日を


休日を早起きしたりわが家にまつはる春の猫に目覚めて


休日を常のごとわが起き出でて音憚
(はばか)りて濯(すすぎ)物干す



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Thu.

近道に


土手越えて川の朝霧わが畑に流れ行く見ゆ橋渡る時


近道に農道を来し薄月夜蛙の声は地より湧き立つ


家から田まで自転車で10分程ですが、
途中の川にかかる橋から、川向こうの田畑に霧が流れるのが見えたのでしょう。
母が58歳の頃の作品です。

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04:39 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Mon.

さつき一鉢


(はは)逝きし後憚(はばか)らぬひとつにて家居のわれの足音高し


貧血と知りたる後もわれのみの昼餉
(ひるげ)にさして手数をかけず


われのみの昼餉炬燵
(こたつ)に運びくるこの気安さも慣れて思はず


魚を焼くにほひまじれる夕風のなまあたたかし街並み行けば


家内に眺むは白き花よしとさつき一鉢置きて寝につく



一〜四句目、祖母が亡くなった翌年の作品で、母が37歳の時でした。
(三句目に、少々季節外れの歌が入りました。)
五句目はそれからちょうど10年後の作品になります。

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19:19 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Thu.

古き家毀ちて広き庭隅に

今日は雑詠の数々を掲載します。
雑詠ということでまとめてみると、なるほどテーマがまったく統一しません。


色褪せし安全旗見ゆ完成の近き統合校舎の上に

これは私が通った中学校のことです。
我が家の田畑から見上げる丘にこの校舎が完成しました。
私はこの校舎で初めての中学一年生でした。
私より2学年上だった兄は、中学三年生からここに移り、
この新しい校舎で学んだのは残念ながらたった1年だけでした。


古き家毀
(こぼ)ちて広き庭隅に馬をつなぎし大き石あり

この歌を見て私は、いつだったか帰省した折に母と一緒に行ったことのある
『目黒邸』(新潟県指定文化財、国の重要文化財)だと思ったのですが、
よく見たらこれは私が12歳で母が34歳の時の作品なので、
帰省した折に、というのは外れでした。まったく別のところだったかもしれません。


(すす)ほこり木肌(きはだ)にしみてただ黒き
            位牌
(いはい)を洗ふ文字読みたくて

時ながく古き位牌を拭きをれば慶應の文字かすかに出でぬ

そう言えば、古い位牌の文字が見えてきたと母が言ったような気もしますが、
どのような状況だったのか覚えていません。


空家とはかく寂しきか行くところくもの巣われの顔にかかれり

これもどこのことだったのか…。


ゆかりなき人の法事の席にゐてしびるる足を気にしつつをり



以上、母が33〜37歳の頃の作品です。

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Fri.

たまさかに

今回も雑詠のいくつかをどうぞ。


吾が常の顔がかへり来美容師の結ひしかさある髪をくづせば


たまさかに乗りし車の酔ひさめぬ身を支へつつ厨
(くりや)に立ちぬ


方形に月の光あるわが部屋に夜更け帰りて灯さず眠る


たまさかに夫
(つま)のおらねば常の夜は開けをく窓も閉して眠る


母が35、6歳の頃の作品です。

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Tue.

再び眩しき入りつ日に遭ふ


庭池の蛙水面に日のさせば背伸びするごと手足伸ばせり


日はいつも山から昇り山に入ると信じゐたりきわが幼日は


日の没
(い)りし山裾ぐるり巡り行きて再び眩しき入りつ日に遇(あ)



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Fri.

終日を雨降りつげば


終日を雨降りつげば貝細工
(かひざいく)花閉じしまま夕べとなりぬ


言葉交はすでもなく夫
(つま)と家ごもりそれぞれ過ごす梅雨の一日を



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Sun.

老眼鏡に馴染めず


いつか要ると姉がくれたる老眼鏡かくれば歌壇鮮やかに見ゆ


老眼鏡かけて天眼鏡覗く画数多き文字見むとして


老眼鏡に馴染めず眼
(まなこ)疲れつつ遠き異国の子へ便り書く



「老眼鏡に馴染めず眼疲れつつ」私に手紙を書いてくれていたとは、
これを見るまで知らずにいました。母56〜58歳の頃の作品です。



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Wed.

村は未だに


川岸に釣人見ゆる午前5時前山は未
(ま)だ朝霧の中


山霧と川霧寄する中にして村は未
(いま)だに眠りたるごと



母59歳の時の作品です。



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Sun.

むささび見たり


隣家の瓦かすめて滑りゆくむささび見たり宵闇の庭



むささび

ムササビの写真は【サバさんの『むささび「ムー」のフォトアルバム21』】よりお借りしています。
ありがとうございます。


母が48歳の頃の作品です。


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Mon.

闇より匂ふくちなしの花


今日もまた暑くなるらし夜明け待ちて聞こえ来るなり蝉の合唱


四季の花美しく咲かす家ありて行くが楽しきこの裏通り


夜更けまで窓開け放つ熱帯夜闇より匂
(にほ)ふくちなしの花



暑いですねー。
母はとにかく暑いのが苦手でしたが、皆さんはバテていませんか。

母が58歳の頃の作品です。


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