Wed.

卒業証書受くる子を見つ


窓近く高き雪壁迫りゐて卒業式の講堂寒し


冬日光ぬくもりもなくさす席に卒業証書受くる娘
(こ)を見つ



私の高校卒業の日でした。母はこの時37歳。
私はあの当時、母に短歌を詠む趣味があろうとはまったく知りませんでした。

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Mon.

にほふみかんを


ことごとに抗
(あらが)へる娘(こ)の去りし卓に
            にほふみかんをわが見つつをり


母はこの時37歳。そして私は…反抗期真っ只中の15歳でした。
あの頃の私が、このような歌になって残っていたとは…。
現在私の娘がこのくらいの年齢になり、
私も日々同じような目に遭ってことを経験しております(笑)。

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Sun.

巣だちゆく子は


もの言へば涙溢るをこらふるに巣だちゆく子は手を振り離る


これは私が勝手に東京に就職先を決めて家を出た時だったと思います。
親の心子知らずとは本当で、私はこれから始まる一人暮らしへの期待にワクワクし、
母がこんな気持ちで涙をこらえて私を見送ったとは、知らずにいました。

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Thu.

夫の心定まるらしも


肝心のことにはふれず花すぎし梅の林を娘
(こ)と語りゆく


(つま)の心定まるらしも伴ひて来し若者と睦まじき娘に


私自身のことなので、掲載するのが少々恥ずかしい気がします。
一句目は、ある年の2月の終わりごろだったかと思います。
二句目はその年のGWで、私が結婚を決めた相手を連れ初めて実家に出向いた時です。
父は、私達に会い結婚を認めるのには随分と抵抗があったようでした。
この約1年後の6月に私は結婚しました。


若者と娘は手を結び登り行く挙式の宮の長き階
(きざはし)


み社
(やしろ)に雪積みゐたり初夏の日の結婚式は夢のごとしも



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Fri.

身籠りて


ビルの間に富士の嶺白し妻となりて娘
(こ)が住む部屋の窓の遥かに


嫁ぎゆく子がさつき花愛でをりし去年の6月思ひ出づるも


身籠りてもの言ひ優しくなりし子と思ひ電話の声聞きてをり


これも私のことなので少々恥ずかしいのですが、
こういう歌も入れないと、孫誕生の歌がいつまでたっても登場しませんね。

私は東京での一人暮らしが長かったのですが、
結婚後も引き続き東京に住んでいました。
その住まいから、空気の澄む冬の寒い日には富士山が見えました。
母が55歳の時の作品です。

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Wed.

嫁と子と


スーパーを出づればすでに街明り点りて白き夕月かかる


山峡の村は日暮れて夕六時「峠の我が家」のメロディ流る


嫁と子と共に臨月迎へたるこの日頃心落ちつかずをり


三句とも、季節は秋になります。
母が55歳だったこの年の10月、義姉と私は臨月を迎えていました。

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Sat.

熱出でし


熱出でし産褥の子を看りゐる夜更け小さき地震行き過ぎつ


産褥の子を看りゐる二週間垣の山茶花
(さざんか)咲き又散りぬ


熱ひきて産褥の子の眠りゐる部屋内しばし照らす入りつ日


元気よき児
(こ)なりとまだ見ぬ初孫の泣く声電話に聞きて夫(つま)言ふ


東京の風澄める日はくきやかにビルの間に富士山が見ゆ



孫の顔を一目見て帰った母は、後日改めて上京し、
ニ週間ほど私の世話をやいてくれました。
私は乳腺炎で二度も高熱が出てしまいました。


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Mon.

文明は


文明はありがたきかな外国ゆ
(=から)声明らかに電話かかり来


地図の上
(へ)に子が行きし旅辿(たど)りゐるカリブヨーロッパわれには遠し



前回掲載分に続く歌です。母57歳の時の作品です。



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Mon.

一年ぶり


一年ぶり邦人に会ひ話せしと便り寄越
(よこ)しぬ子は異国より


ドイツに初めて住んだ私は、当時は身近に日本人の知り合いが誰もいませんでした。
前に掲載したことのある
「老眼鏡に馴染めず眼疲れつつ遠き異国の子へ便り書く」
の歌が、花咲く道の本の中ではこの句に続いています。
母が58歳の時の作品です。


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Sat.

生まれし子抱き


親切な人多しと言ふ異国にて二人目の子を生みし娘は


ドイツに移り住んで1年ほどした頃に、下の子が生まれました。



親切な異国の人に助けられ生まれし子抱き娘
(こ)は帰国しぬ


二年弱住んだドイツからまた東京に戻ることになりました。
ドイツで生まれた下の子が1才になるかならないかの頃で、
上の子は3歳半を過ぎていました。
母59歳の時の作品です。


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Sat.

庭先の柿熟るる頃


庭先の柿熟るる頃帰省すと
         いふ娘
(こ)を待てり色づく見つつ



母が44歳の時の作品で、この時私は22歳でした。
柿の熟す頃に帰省するようなことを、
22歳という若さで私が母に言ったことがあったかなぁ、と、
実はもう覚えていません…。


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