Mon.

どこよりか小鳥の声す


小田に積む三米の雪消すと黒き灰撒く汗ばみながら


どこよりか小鳥の声す凍
(し)み雪の厚き畑に灰撒きをれば


隣接に生コン工場建ちてより静寂のなき小田に疲るる


冬入り日まともに受けて壁白き工場のあたり明るく見ゆる


一句目は、今よりはるかに積雪量の多かった頃の、昭和59年(母46歳)の作品です。
二句目はその約10年後です。
我が家は、父が教員をしていて、農業が従の兼業農家でした。
冬になると農作業が無いのでほっとしていた母でしたが、
春になるといろいろと忙しくなり、
寝たきりの祖母を看ながらの農作業は、どれほど大変であったろうかと思います。
三句目の工場ができたのは昭和45年頃の話です。
あれが一日中うるさくて・・・と母が言っていたのを思い出します。

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23:50 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Sun.

野の雪の平たくなれば


見定めし位置掘りゆけば雪の底にわが田にひかむ水音聞こゆ


雪解けし水ぬくみをり昨年の秋堆肥を積みしわが靴跡に


野の雪の平たくなれば

      急かさるるごとき思ひに種籾(たねもみ)(ひた)


常のごと籾を漬せり減反にかかはりのなき自給農われは


雪解け間近、これから田畑の仕事で忙しくなってきます。
この時30代前半でまだ若かった母は、農作業があまり好きではなかったようです。

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01:57 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Mon.

春耕の音たへ間なき


堆肥積みて一輪車押す単調に耐へて一日田を行き来する


春耕の音たへ間なき農道の青草の中にポットが光る


夜になりてなほも響ける耕耘機のライトが闇に向きかへてをり


病癒えて夫
(つま)が動かす耕耘機
           一日かかりて代掻(しろか)き終へぬ


代掻きを終へて安堵の帰り道水張りし田に初蛙聞く


「代掻き」とは、田植え前の準備作業です。
田に水を入れた後、耕運機などで土壌を攪拌、砕土、
水田の面を平らにし、苗を植えやすくする作業です。

しばらくは農作業の忙しい日々が続きそうです。よろしくお付き合いください。
今日は、作者30代半ばの三作品と、57歳の時の作品が混ざりました。

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05:00 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Tue.

四月の照りの野に励み来て


(あぜ)陰に残れる雪に茶を冷やし
                     馬鈴薯植ゑむ畑(はた)を打ちをり


土掘るに昼過ぎ早く疲れつつ飛行機雲の解くるを眺む


手の内の厚くなりしと思ひつつ一日使ひしシャベルを洗ふ


目つむればまなうら熱し終日を四月の照りの野に励み来て



一句目では作者48歳、続く三句では作者37歳でした。
私自身は子供の頃、特に中高生の頃は、
農作業など何だかとても格好の悪いことのように思えて、
田植えや稲刈りに駆り出された時には嫌々手伝いましたが、
それ以外は、何かを手伝った記憶がありません。

母が、毎日毎日田んぼや畑から疲れて帰ってきて、
寝たきりの祖母を看、晩ご飯の支度もしていたのだと、
今になって、歌を眺めてやっとその苦労が見えてくる気がします。
どうしてこういう気持ちを、あの時は持てなかったのでしょう。
ねぎらいの言葉一つも、かけてあげることがありませんでした。

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05:43 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Wed.

若き日の吾を見る如し


若き日の吾を見る如し若妻は慣れぬ手つきに鍬
(くは)振りてをり


春幾日野良に励めば化粧品は既に意味なきわが貌
(かほ)となる


(にはか)にも春長(た)けにけり
          抜き捨てし冬菜にも薹(たふ)の立ちて花付く


「若き日の吾を見る如し若妻は」と歌ったこの時、そして二句目も、
母はまだ32歳の若さでした。
三句目は、24年の時を隔てています。母56歳の作品です。

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04:32 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Thu.

田植ゑ


苗取りて束ねる術を知らぬとて

           若きは寄りぬ苗代(なわしろ)の畦(あぜ)


苗代に育った苗をいったん取って束ねてから、手植えに取りかかります。


田植ゑ枠一直線にころがして夫(つま)と手植ゑす日の入りてなほ


ねんごろに苗手植ゑせり米余ると言はれたる日も今年の春も


田を植うと一日励みし夕暮れはむくみたるごとわが顔重し


一日田に浸りたる足ほてりつつ寝つかれずいて田蛙を聞く



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05:58 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Fri.

田植ゑの数日


田植ゑするわが小田の上風にのり

         蒲公英(たんぽぽ)の種子数多(あまた)越え行く


田植ゑかご置きて休みぬ遠山に消え残る雪の形云ひつつ


見出しだけ読みし新聞枕辺に積みて田植ゑの数日は過ぐ


手植えをしているため時間がかかっております。田植えの日々、まだ続きます。

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19:55 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Sat.

田植ゑ終りし一日


帰省せし人も総出に連休の村は田植ゑの賑
(にぎ)はいに過ぐ


夜半
(よは)幾度も目覚むる癖に悩みつつ

             田植ゑ終りてしるく疲るる


すずらんの香りを部屋に満たしめて

             田植ゑ終りし一日(ひとひ)こもれる


手作業のため時間のかかった田植えも、ようやく終わりました。

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Mon.

わが汗涙浸みしこの土


山畑は元の原野に戻りゐて登り来たればうぐいすの鳴く


山畑は茅野
(かやの)となりぬ若き日のわが汗涙浸(し)みしこの土


昨日と同じく山の畑を詠んだ歌ですが、これは作者59歳の作品で、
前回の歌より25年ほど時が隔たっています。
今度私も実家に帰ることがあったら登ってみようかと思います。

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07:01 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Wed.

どの顔も手も


緑増す田に水引きて見廻れば前山の方うぐいす鳴けり


農道に集まり憩ふ農婦われらどの顔も手も日焼けて光る


土手越えて川面の霧の流れくる苗田にをれば寒し日暮れは


二句目、野良仕事の合間に母は、
両隣の田畑のお母さん達と一緒に休憩をしていたようです。
どの人も、太陽の下での農作業でとても日焼けしていて、
「肌がつっぱるものだからみんなの顔がつやつや光って見えるんだよねぇ」
と母が言うのを聞いた覚えがあります。

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Sat.

おたまじゃくしは

除草剤まきて見まわる水口におたまじゃくしはひしめきて寄る


いきものの為と除草剤きらふ子は田の草を取る苦しさ知らず


除草すと田を這ひをれば曲げゐるに慣れたる腰のすぐには立てず


田草取るわが手元よりゆらゆらと翅やはらかき蜻蛉とびたつ


三句目までは母が30代半ばの作品で、四句目は40代半ばの作品です。
二句目の「子」とは私の兄のことで、兄が16歳の時でした。
三句目、ずっと腰を曲げて作業をしていると
痛くてすぐには腰を真っ直ぐに伸ばせない、と母が言っていたのを思い出します。

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Tue.

若き日は嫌ひてをりし


(もぢ)れつつ花咲きのぼる捩摺(もぢずり)の茎直に立つ畦草の中


若き日は嫌ひてをりし畑仕事楽しと思ふ五十路
(いそじ)となりて


若き日は嫌ひてをりし農なれど地に育つもの今われをなぐさむ


一句目は母が47歳の頃の作品です。
続く二句は、50代に入ってからの作品です。
地に育つものになぐさめられるというのは、私も同感です。

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Fri.

明日は咲く


梅雨明けの近き兆しにもぢずりの花咲きはじむ小田の道辺に


明日は咲く南瓜の花に笠かけて梅雨まだ続く畑より帰る


母が47歳の時の作品です。
二句目、母らしい歌で私はとても気に入っています。

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Thu.

待てど待てど


待てど待てど雨は降らざり豆植うると固き畑土打てば舞ひ立つ


晴天の続き嬉しきひとつにて南瓜
(かぼちゃ)の雌花(めばな)みな実となりぬ



とにかく暑いのが苦手な母でしたが、
こうして嬉しいことも見つけては暑さに耐えていたのでしょうか。
母56歳の頃の作品です。


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23:38 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Sun.

登る穂は


落つる汗袖に拭
(ぬぐ)ひて草引けば額に涼しき一陣の風


稲田


稲の穂の茂るばかりと見ゆれども根方太りて穂を育
(はぐく)める


登る穂は日に日に見えて梅雨明けの続く日差しに稲田かがやく


稲の花
稲の写真は季節の花300さんのサイトからお借りしています。


母が59歳の時の作品です。
最後の句に、「梅雨明けの日差し」とあります。
今は8月の下旬。もっと早い時期に掲載すればよかったです。

歌集「花咲く道」には、昭和45(1970)年から平成9(1997)年の27年間に渡る母の短歌作品を、時系列に収めてあります。私はいつも、歌集全体を眺めては、各年の作品から今の時期に合わせて歌を選んでいるつもりなのですが、どうしても見落としが出てきて、こんな風に時期を逸して掲載することになってしまいます。

今年2月に始めたこのブログ、約一年をかけ季節が一巡りする間に、ほぼ全ての作品を掲載できるかな、と思っています。これまでにほぼ半数を掲載できたあたりでしょうか。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。


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06:05 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Thu.

芋の葉に溜まりし露で


秋蒔きの種子買ひ揃へ畑打ちて炎暑しづむる雨来るを待つ



野沢菜を間引き終りて芋の葉に溜まりし露で指先洗ふ


里芋
写真はたんとの四季折々写真俳句さんからお借りしています。ありがとうございます。

母が50歳の時の作品です。



里芋の葉に溜まりては落つる雨囀
(さへず)りのごと畑に音たつ


里芋
写真は季節の花300さんからお借りしています。ありがとうございます。

母が55歳の時の作品です。


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Fri.

かたむきし稲穂の上に


かたむきし稲穂の上に藁
(わら)よせて作りかけたる鳥の巣のあり


夜半
(よは)覚めて耳すませをり倒れ伏す稲打ちて降る雨を思へば



順に、母が37歳、55歳の時の作品です。


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Fri.

今日漸くに降る雨をみつ


水道の水が温
(ぬく)しと思ふ朝暦は今日を白露(はくろ)と告ぐる


野沢菜の種蒔き終へて白露とふ
(=という)今日漸(やうや)くに降る雨をみつ


夕暮れて雨となりたり今日蒔きし野沢菜の芽は揃ひて出でむ


野沢菜


ウィキペディアによれば、白露というのは、
「二十四節気の1つ。9月8日ごろ。およびこの日から秋分までの期間」だそうです。

順に、母が45歳、58歳、56歳の時の作品です。


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Sat.

すいすいと


すいすいと韮
(にら)は茎立ち花咲きぬ晩夏の雨の過ぎし畑に


畑韮1  韮の花
写真は季節の花300さんからお借りしています。ありがとうございます。


母が58歳の時の作品です。


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Sun.

会ひても言葉かはすことなし


農道を車通れば稲田より雀飛び立ち電線に並ぶ


穂肥撒く行手に跳ねて数ミリのいなごは稲の葉裏に隠る



稲作も代
(だい)が替はりて若きらは出勤前に田を見て廻る


稲作の代が替はりて農道に会ひても言葉交はすことなし



後ろの二句は、書き出し部分の似ているものが並びました。
最後の句、ちょっとさびしそうですね。
だんだんとこういう風になっていくものなのでしょうか。
母58歳の時の作品です。


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