Fri.
02/22/2008
如月の半ばとなりて
続きたる寒気ゆるみし雨の夜は氷柱の落つる重き音する
明るみし空より淡き陽のもれて積もらぬ雪のひもすがら舞ふ
み社(やしろ)の森を越えくる日を待ちて戸を開け放つ雪晴れし朝
如月の半ばとなりて降る雪は一日ニ尺一夜にニ尺
雪降るが常の二月の寒からず水底の鯉静かに動く
Sun.
02/24/2008
手術口僅か二寸といふに
かくも易く歩行不能となるわれか手術口僅か二寸といふに
わが臓器とり出だされてガラス器に標本のごと納まるを見る
手術口怖れつつゐるに回診の医師は一気にガーゼを剥がす
覚めゐるはわれのみあらず病棟に忍びつつする咳きこゆ
Sun.
02/24/2008
寮はわびしと
死後の処置尽くして夜勤明けし日は寮はわびしと妹が来る
嫁ぎても白衣脱がざること決めて迫りくる日々を励む妹
花嫁の装ひ成りし末の娘をながめて母は多く語らず
新婚の旅に末娘を送り来て黙しつつ父も母も歩めり
Mon.
02/25/2008
ゆきちがふ思ひのありて
黄ばみたる夫(つま)の教員免許状家を支へて二十年経ぬ
若き日の夫が日記にわれのことやさしき少女と記しをきたり
その性に似しごと若き日のままに夫の字画のくずることなし
夫とゐて夜の刻長しゆきちがふ思ひのありて黙してをれば
Tue.
02/26/2008
座りゐる様いぶかりて
病む姑(はは)を看りつつ思ふ職も技も持たざるわれの老ひし日のこと
わが姑の癒ゆる日あらば奇跡とぞにべもなく医師はわれに告げたり
家隅に癒ゆる当てなく臥す姑はわれの脳裡を消ゆることなし
座りゐる様いぶかりて吾がかけし手に意識なき舅(ちち)は倒れ来
もの問へばうなづくのみの病む舅に真白き髭はいたく伸びたり
Thu.
02/28/2008
わびしさの極まりにけり
わびしさの極まりにけり
舅姑(ちちはは)の襁褓(むつき=おむつ)縫ひつつ雨にこもれば
病もて口きけぬ舅に何ごとか問ひかくる姑の低き声する
病む舅の皺伸ばしつつ白き髭剃りゐてふいに涙こぼれき
指先にガラスの曇りぬぐひつつ臥す舅姑に初雪を告ぐ
死期迫る老がしきりに空に出す意識なき手を握りてやりぬ
常臥しの姑に心を残しつつ舅逝きたまふ春待たずして
Fri.
02/29/2008
小さき体の形残れる
家にては気のつかざりし梅の香の帰り来たれば玄関に満つ
近づけば雀とびたちて雪の上(へ)に小さき体の形残れる
咲き満ちし白梅の鉢を部屋隅に雪にこもりぬその香もわれも
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