Tue.

燕帰り来去年の古巣に


残り雪三尺あれど春は来て燕帰り来去年の古巣に



わが畑の茄子の支柱に雛並べ順番に餌
(え)を与ふ親燕


わが畑の茄子の支柱に並びゐる子燕の色親より淡し



わが車庫に燕孵
(かへ)りて親鳥の出で入るに声は居間まで聞こゆ


健やかに親鳥となれよ子燕ら梅雨晴れの空へ今朝巣立ちたり


巣立ちたる雛伴ひて電線に並ぶ燕の囀
(さへず)り聞こゆ


子燕の巣立ちし後は旅立ちて空きたる子等の部屋にも似たり



夏の時惜しむがにして燕
(つばくろ)は今年二度目の巣籠(すごも)りはじむ



燕を詠んだ作品を集めました。母56歳から59歳の頃の作品です。
我が家のガレージと、そして畑の荷物小屋にも、燕が巣を作りました。


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Thu.

よき実を選りて


(つま)の靴二十七センチが孫の靴十三センチと並ぶ玄関


梅雨に入りて畑の苺の傷
(いた)み易しよき実を選(よ)りて児に持ち帰る



母は日中兄の子を預かっていました。
孫のために傷みの少ない苺を選んで摘んできたのですね。
母57歳の時の作品です。


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Fri.

畑隅に


畑隅に這
(は)ひ広がりし露草は比類なき藍の花鏤(ちりば)むる


露草

露草の写真はこちらからお借りしました。ありがとうございます。


母が56歳の時の作品です。


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Tue.

負ひて歌えば


絶え間なく欅
(けやき)の花の散る木陰児(こ)のブランコに手を添へ揺する


吾がうたふ童謡いくつか児は覚え負ひて歌えば首振りて和す


眠たくて吾が胸に顔を寄する児のやはらかき髪指に梳
(す)きやる



母は兄の子を日中預かっていました。
57歳の時の作品です。


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Thu.

習ひ守りて


一才となりし児
(こ)に餅背負はする習ひ守りて初孫祝ふ


(つつが)なく満一才となりし児よ一升餅負ひよろよろと立つ


やおら立ち両手広げて歩みつつ声たて笑ふ一才の児は



兄の子の1歳を祝った歌です。兄のところも私のところも、ほぼ同じ頃に子供が生まれたのですが、二人の孫が生まれた平成5年秋以降は、母の短歌の数がぐっと増えました。「自分の子よりもかわいいと思う」孫だったそうです(笑)。母が56〜57歳の時の作品です。


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Sat.

遊びの種も


一才の児
(こ)と家ごもる雨の日は遊びの種も出でつくしたり


やおら立ち両手に調子とりて来る一才の児を胸に受け止む



前回掲載の歌と同時期の作品で、兄の子を歌ったものです。



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Sun.

いつものやうに


(つま)の国ドイツに住むと発つ娘元気でと言ふいつものやうに


(こ)の電話に入りて聞こゆる幼児(をさなご)のまはらぬ口にハイと言ふ声


(と)つ国に住むと成田を発つ孫がバイバイと言ふいつものやうに


父の国ドイツに住むと発つ孫の声を電話に耳すませ聞く



私の夫はドイツ人で、娘が1才半の頃に東京からドイツに移ることになりました。
成田空港から電話した時のことです。母が57歳の時の作品です。



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Mon.

文明は


文明はありがたきかな外国ゆ
(=から)声明らかに電話かかり来


地図の上
(へ)に子が行きし旅辿(たど)りゐるカリブヨーロッパわれには遠し



前回掲載分に続く歌です。母57歳の時の作品です。



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Tue.

見れば恋しも


うつぎ花ニセアカシアと咲きつぎて川原にも初夏の色移りゆく


うつぎ花

ニセアカシア

うつぎ花の写真はSaltyDogさんのサイトから、
ニセアカシアの写真は、フォトライブラリーさんからお借りしました。
ありがとうございます。

インターネットで調べたら、うつぎ花もニセアカシアも5〜6月に咲くようですね。
掲載時期、ずれてしまいました。
母が55歳の時の作品です。




グラビアに日光黄管
(にっこうきすげ)群れ咲くを見れば恋しも杳(とほ)き日の尾瀬

日光黄管

日光黄管 尾瀬

ニッコウキスゲの写真は2枚共、フォトライブラリーさんからお借りしました。
ありがとうございます。

日光黄管は、7月、ですね。(間違いないでしょうか?笑)
母が49歳の時の作品です。



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Wed.

草陰に命灯せり


伸び盛る稲田の上を浮き沈み蛍とび交ふ夏は来にけり



なつかしきものに会ひたる心地して蚊帳
(かや)にまつはる蛍に見入る



家内に迷ひ入りたる蛍ひとつ暫
(しばら)く眺め闇に放ちぬ



蛍



昨夜今宵同じき草にゐる蛍水におのれの光うつせる



雨降れば蛍はとばず草陰に命灯せり昨夜も今宵も



母が48〜49歳の頃の作品です。

三句目のみ、母が59歳のときの作品で、
この夏が過ぎる頃母は帰らぬ人となりました。



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Fri.

児ははじめての夏を堪へゐる


膝元に這
(は)ひて寄り来し児(こ)を抱けばその小さき背も汗ばみゐたり


ことさらに暑きこの夏背の汗を拭きやれど児はむずかりやまず


柔肌に汗疹
(あせも)うっすら浮かばせて児ははじめての夏を堪(た)へゐる


母が日中預かっていた兄夫婦の子を詠んだ作品です。
母は56歳、兄の子は10ヵ月の頃でした。


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Sun.

老眼鏡に馴染めず


いつか要ると姉がくれたる老眼鏡かくれば歌壇鮮やかに見ゆ


老眼鏡かけて天眼鏡覗く画数多き文字見むとして


老眼鏡に馴染めず眼
(まなこ)疲れつつ遠き異国の子へ便り書く



「老眼鏡に馴染めず眼疲れつつ」私に手紙を書いてくれていたとは、
これを見るまで知らずにいました。母56〜58歳の頃の作品です。



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Mon.

暑き日に


暑き日にレモンバームは茎立ちて花楚々と咲く菜園の隅


レモンバーム




庭先のバーベナに来し揚葉蝶
(あげはちょう)(はね)震ふ度花もふるへる


バーベナ



母が59歳の頃の作品です。



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Tue.

釣る夫に


釣る夫
(つま)に昼餉運ぶと葛(くず)の蔓(つる)に足とられつつ土手を下りゆく


高校教師をしていた父は、鮎釣りが趣味で、
学校が夏休みになると、毎日のように朝から晩まで川に行っていました。
(当時の教師というのは、今と違ってほとんど毎日休めたのです。)

いつもならば、早朝に釣りに出かける父にお弁当を持たせていた母でしたが、
この日は昼におにぎりでも届けに川に向かったのでしょうか。

10年も寝たきりだった父方の祖母が亡くなったのはこの夏のことで、
母は36歳でした。



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Wed.

村は未だに


川岸に釣人見ゆる午前5時前山は未
(ま)だ朝霧の中


山霧と川霧寄する中にして村は未
(いま)だに眠りたるごと



母59歳の時の作品です。



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Thu.

七十となりたる姉は


姉上の作りてくれし紫蘇
(しそ)ジュース暑さに萎えし我を慰(なぐさ)



紫蘇



七十となりたる姉は健やかに色よき紫蘇を作り商
(あきな)



紫蘇の絵は「おいしいねっと」さんの紫蘇のページからお借りしています。
ありがとうございます。


母は、とにかく暑いのが苦手な人でした。
あんまり暑いと、もう泣きたくなるー、とよく言っていたものです(笑)。
この「姉」とは、六人姉妹の一番上の姉のことです。
私にとっても、身近な伯母でした。
順に、母が57歳、59歳の頃の作品です。


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04:00 | 姉妹 | comments (2) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Sun.

むささび見たり


隣家の瓦かすめて滑りゆくむささび見たり宵闇の庭



むささび

ムササビの写真は【サバさんの『むささび「ムー」のフォトアルバム21』】よりお借りしています。
ありがとうございます。


母が48歳の頃の作品です。


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04:30 | 雑詠 | comments (2) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Mon.

茗荷の葉群


炎天の十日続けど朝見れば茗荷
(みょうが)の葉群露しとどなる


みょうが


母が48歳の頃の作品です。


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Tue.

親子の鴨は


朝霧の流るる水面水皺を引きて親子の鴨は遊べる


対岸の柳林に鳴く鳥の声賑
(にぎ)やかに届く土手歩む



家から自転車で10分ほど行くと橋があって、
それを渡って右に折れると川沿いに土手が続きます。
おそらくその土手のことだと思います。
母が56、57歳の頃の作品です。


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Thu.

松葉ぼたんは


晴天の続きて暑き日盛りを松葉ぼたんは賑
(にぎ)やかに咲く



母56歳の頃の作品です。


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Thu.

待てど待てど


待てど待てど雨は降らざり豆植うると固き畑土打てば舞ひ立つ


晴天の続き嬉しきひとつにて南瓜
(かぼちゃ)の雌花(めばな)みな実となりぬ



とにかく暑いのが苦手な母でしたが、
こうして嬉しいことも見つけては暑さに耐えていたのでしょうか。
母56歳の頃の作品です。


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23:38 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑