Tue.

夫もわれも


年のせいと医師の言わぬは嬉しとて待合室に老ひ人溢
(あふ)


(つま)もわれも朝餉の後をいくつかの薬並べ飲む勤めのやうに


いつも元気と思っていた母も、
そんな風に薬を飲むようなことがあったのですね。知りませんでした。
父は、心臓を患っていたのと糖尿とで、何年も薬を服用していました。
母が59歳の時の作品です。


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20:57 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Tue.

立秋の


立秋の日の習ひにて夜明け前清流に水浴びし幼日
(をさなび)



立秋とは、去る8月7日でした。
またしても掲載時期を逸してしまいました。
母が58歳の時の作品です。


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Thu.

あのねおばあちゃん!


離れ住む孫が電話にたどたどと幼稚園に兎いるよと告げぬ



クッキーの型抜きしつつ幼児
(をさなご)は作るよろこび一つ知るらし



意味もなく線引きゐたる幼児がこのごろ人の顔書きはじむ



「お」の付くと言へばすかさず
         おかあさん!と児
(こ)は叫ぶなり言葉あそびに



あのねおばあちゃん!で始まる児の電話
         今日はメガレンジャーの話にて終ふ



兄の子を詠んだものです。
母59歳、兄の子は3歳の頃でした。


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22:24 | | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Mon.

季節移ろふ狭間に居りぬ


台風の余波にて暑きこの夜更け鎮守の森の蝉時雨
(せみしぐれ)止まず



昼は蝉夜はこほろぎの声のして季節移ろふ狭間
(はざま)に居りぬ



故のなき腱鞘炎
(けんしょうえん)をかこちつつ夏過ぎむとす蜩(ひぐらし)の声



母59歳の最後の夏が過ぎようとしています。



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05:50 | 雑詠 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Thu.

芋の葉に溜まりし露で


秋蒔きの種子買ひ揃へ畑打ちて炎暑しづむる雨来るを待つ



野沢菜を間引き終りて芋の葉に溜まりし露で指先洗ふ


里芋
写真はたんとの四季折々写真俳句さんからお借りしています。ありがとうございます。

母が50歳の時の作品です。



里芋の葉に溜まりては落つる雨囀
(さへず)りのごと畑に音たつ


里芋
写真は季節の花300さんからお借りしています。ありがとうございます。

母が55歳の時の作品です。


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20:42 | 農作業 | comments (2) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Fri.

かたむきし稲穂の上に


かたむきし稲穂の上に藁
(わら)よせて作りかけたる鳥の巣のあり


夜半
(よは)覚めて耳すませをり倒れ伏す稲打ちて降る雨を思へば



順に、母が37歳、55歳の時の作品です。


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Fri.

今日漸くに降る雨をみつ


水道の水が温
(ぬく)しと思ふ朝暦は今日を白露(はくろ)と告ぐる


野沢菜の種蒔き終へて白露とふ
(=という)今日漸(やうや)くに降る雨をみつ


夕暮れて雨となりたり今日蒔きし野沢菜の芽は揃ひて出でむ


野沢菜


ウィキペディアによれば、白露というのは、
「二十四節気の1つ。9月8日ごろ。およびこの日から秋分までの期間」だそうです。

順に、母が45歳、58歳、56歳の時の作品です。


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22:38 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Sat.

すいすいと


すいすいと韮
(にら)は茎立ち花咲きぬ晩夏の雨の過ぎし畑に


畑韮1  韮の花
写真は季節の花300さんからお借りしています。ありがとうございます。


母が58歳の時の作品です。


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Sat.

色優しきに近づけば


(くず)の花色優しきに近付けば地を這ふ蔓(つる)はロープの如し


葛の花
写真は季節の花300さんからお借りしています。ありがとうございます。


母58歳の時の作品です。


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Sun.

会ひても言葉かはすことなし


農道を車通れば稲田より雀飛び立ち電線に並ぶ


穂肥撒く行手に跳ねて数ミリのいなごは稲の葉裏に隠る



稲作も代
(だい)が替はりて若きらは出勤前に田を見て廻る


稲作の代が替はりて農道に会ひても言葉交はすことなし



後ろの二句は、書き出し部分の似ているものが並びました。
最後の句、ちょっとさびしそうですね。
だんだんとこういう風になっていくものなのでしょうか。
母58歳の時の作品です。


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Mon.

中秋の名月待てる縁側に


中秋の名月待てる縁側に遠近にして虫の音聞こゆ


木立越え昇り来る月おほどかに鎮守の森を今離れたり

                         おほどかに=おっとりと、ゆっくりと

山の端に残りて白き十五夜の月朝霧に紛れて消えぬ



順に、母が58歳、46歳、56歳の時の作品です。


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Mon.

稲刈るに少し間のあり


稲刈るに少し間のあり敬老日水石展に夫
(つま)と連れ立つ


あまり出かけるのを好まなかった父でしたので、
珍しく一緒に出かけられて母も嬉しかったのでしょう。
母58歳の時の作品です。


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Tue.

雨降れば


雨降れば昼静かなり厨辺
(くりやべ)に折り折り鳴けるこほろぎのゐて


秋晴れの少なき九月虫の音はか細くなりぬ夜毎の雨に



順に母が50歳、56歳の時の作品です。


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Tue.

伸ばす手の先


負ひし児
(こ)が伸ばす手の先赤蜻蛉(あかとんぼ)
              止まりてコスモスの花揺れ止まず


負ひし児にせがまれて来し子供広場雨降る今日は人影もなし



日中預かっていた兄の子を詠んだ歌です。
1歳になる少し前の頃だと思います。
そして母は56歳でした。


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Fri.

山の端に


山の端
(は)にのみ夕立の残りゐて夕日の中に欠けし虹たつ


行き交
(か)ひの車に揺るるひまわりの実を持ちてよりよろよろ動く



またしても、掲載時期が少々遅れてしまいました。
共にかなり初期の作品で、この時母は32歳でした。


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Sat.

葉裏返せり疲れたるごと


台風の荒るる東京大雨は路面にあふれ人行き惑ふ


大事なく台風過ぎしと旅先の伊豆より吾子は電話かけきぬ


台風に一日
(ひとひ)揉まれて前山は葉裏返せり疲れたるごと



二句目は、私が電話をかけた時のことだったように思います。
母55歳の時の作品です。


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Tue.

晴天の幾日続けば


稲刈ると村人待ちゐし日曜日台風の雨遂
(つひ)に止まざり


湿田に稲を刈りをり結
(ゆ)はふ時田水の散るに笠被りつつ


手刈りをしていたので、稲刈りには何日もかかっていたようです。
順に母58歳、35歳の時の作品です。



晴天の幾日続けば手のかふの荒れ極まりぬ稲刈り時は


稲刈りて荒れし手の内雨降りて一日こもればたちまちに癒ゆ


この二句は、母が32歳の時の作品で、
短歌作品として遺されている中でも最も古いものになります。
「晴天の幾日続けば〜」、私の好きな句です。


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18:54 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Tue.

チューリップが咲いていたねと


大掃除大洗濯して終りたり預かれる孫来ぬ日曜日


三歳児に思ひ出ありてチューリップが咲いていたねと秋の畑に


兄の子を歌ったものです。母が58歳の時の作品です。



ユニセフに些
(いささ)かの寄付送金す孫ら健やかにゐるを謝しつつ



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Fri.

稲刈りの最中の一日


たわわにも稗
(ひえ)の実りてわが小田は怠(おこた)りし除草あらはとなりぬ


稗抜くと分け入る稲田刈り取りに未
(ま)だ間のありて蝗(いなご)飛び交ふ




有り余る米とはいへど地干し稲まとめし後の落穂を拾ふ


稲刈りの最中
(さなか)の一日(ひとひ)荒れし手をいたはりこもる雨止まざれば


台風の名残りの雨に倒れ伏す稲田にあまた雀群れゐる




実の入らぬ稲刈り捨つる北国のニュース切なし吾も農なれば


慟哭のごと聞こえをり実の入らぬ稲刈り捨つる機械の音は




穂の出でし稲刈り捨てて収穫を減らさむとする不可思議な世ぞ


稲を刈る小田より見えて列長く遠足の子ら坂登り行く




幾日もかかりて手刈りせし稲をコンバイン来て一日に終ふ


稲刈りて日に干す作業幾日も続けし若き日は懐かしき



稲刈りの歌をまとめてみました。
母32〜58歳の間の作品です(昭和45年〜平成8年)。


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