Mon.

ふるさとを恋ふ日もあらむ


ふるさとを恋ふ日もあらむサーカスの象は前足高く上げ立つ


ふるさとを恋ふ日もあらむサーカスの象は足寄せ杭渡り行く



二句目が、母の亡くなった後に新聞の歌壇ページに掲載されたように記憶しています。
母59歳の時の作品です。


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Thu.

庭隅に萩一株を

久しぶりに歌集の始めのほうのページをめくっていたら、
10月というのに蛍の歌を見つけました。
以下の三句、本の中でもこの順に並んでいます。


蛍ひとつ眺めてあれば街灯の明りに紛れ見失ひたり



たまさかに夫
(つま)のをらねば常の夜は開けをく窓も閉してねむる



庭隅に萩一株を植ゑてより夜になれば葉を閉づと知りたり


萩の花
写真は季節の花300さんからお借りしています。ありがとうございます。


母35歳の時の作品です。


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Wed.

夕光に


手にとれば籾
(もみ)平たくて山の田は実らぬままに秋深みゆく


夕光に羽ひかりつつ赤蜻蛉
(とんぼ)稲架解くわれの頭上に群るる


自転車の籠に止まりし赤とんぼと共に走りて畑
(はた)より帰る


わが肩に止まりたるまま赤とんぼ畑より家まで従
(つ)きて来たれり



二句目は母が45歳の時の作品、
他は、母が55〜58歳の時の作品です。


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Fri.

稲刈りの最中の一日


たわわにも稗
(ひえ)の実りてわが小田は怠(おこた)りし除草あらはとなりぬ


稗抜くと分け入る稲田刈り取りに未
(ま)だ間のありて蝗(いなご)飛び交ふ




有り余る米とはいへど地干し稲まとめし後の落穂を拾ふ


稲刈りの最中
(さなか)の一日(ひとひ)荒れし手をいたはりこもる雨止まざれば


台風の名残りの雨に倒れ伏す稲田にあまた雀群れゐる




実の入らぬ稲刈り捨つる北国のニュース切なし吾も農なれば


慟哭のごと聞こえをり実の入らぬ稲刈り捨つる機械の音は




穂の出でし稲刈り捨てて収穫を減らさむとする不可思議な世ぞ


稲を刈る小田より見えて列長く遠足の子ら坂登り行く




幾日もかかりて手刈りせし稲をコンバイン来て一日に終ふ


稲刈りて日に干す作業幾日も続けし若き日は懐かしき



稲刈りの歌をまとめてみました。
母32〜58歳の間の作品です(昭和45年〜平成8年)。


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05:32 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Tue.

チューリップが咲いていたねと


大掃除大洗濯して終りたり預かれる孫来ぬ日曜日


三歳児に思ひ出ありてチューリップが咲いていたねと秋の畑に


兄の子を歌ったものです。母が58歳の時の作品です。



ユニセフに些
(いささ)かの寄付送金す孫ら健やかにゐるを謝しつつ



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Tue.

晴天の幾日続けば


稲刈ると村人待ちゐし日曜日台風の雨遂
(つひ)に止まざり


湿田に稲を刈りをり結
(ゆ)はふ時田水の散るに笠被りつつ


手刈りをしていたので、稲刈りには何日もかかっていたようです。
順に母58歳、35歳の時の作品です。



晴天の幾日続けば手のかふの荒れ極まりぬ稲刈り時は


稲刈りて荒れし手の内雨降りて一日こもればたちまちに癒ゆ


この二句は、母が32歳の時の作品で、
短歌作品として遺されている中でも最も古いものになります。
「晴天の幾日続けば〜」、私の好きな句です。


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Sat.

葉裏返せり疲れたるごと


台風の荒るる東京大雨は路面にあふれ人行き惑ふ


大事なく台風過ぎしと旅先の伊豆より吾子は電話かけきぬ


台風に一日
(ひとひ)揉まれて前山は葉裏返せり疲れたるごと



二句目は、私が電話をかけた時のことだったように思います。
母55歳の時の作品です。


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Fri.

山の端に


山の端
(は)にのみ夕立の残りゐて夕日の中に欠けし虹たつ


行き交
(か)ひの車に揺るるひまわりの実を持ちてよりよろよろ動く



またしても、掲載時期が少々遅れてしまいました。
共にかなり初期の作品で、この時母は32歳でした。


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Tue.

伸ばす手の先


負ひし児
(こ)が伸ばす手の先赤蜻蛉(あかとんぼ)
              止まりてコスモスの花揺れ止まず


負ひし児にせがまれて来し子供広場雨降る今日は人影もなし



日中預かっていた兄の子を詠んだ歌です。
1歳になる少し前の頃だと思います。
そして母は56歳でした。


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Tue.

雨降れば


雨降れば昼静かなり厨辺
(くりやべ)に折り折り鳴けるこほろぎのゐて


秋晴れの少なき九月虫の音はか細くなりぬ夜毎の雨に



順に母が50歳、56歳の時の作品です。


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Mon.

稲刈るに少し間のあり


稲刈るに少し間のあり敬老日水石展に夫
(つま)と連れ立つ


あまり出かけるのを好まなかった父でしたので、
珍しく一緒に出かけられて母も嬉しかったのでしょう。
母58歳の時の作品です。


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Mon.

中秋の名月待てる縁側に


中秋の名月待てる縁側に遠近にして虫の音聞こゆ


木立越え昇り来る月おほどかに鎮守の森を今離れたり

                         おほどかに=おっとりと、ゆっくりと

山の端に残りて白き十五夜の月朝霧に紛れて消えぬ



順に、母が58歳、46歳、56歳の時の作品です。


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Sun.

会ひても言葉かはすことなし


農道を車通れば稲田より雀飛び立ち電線に並ぶ


穂肥撒く行手に跳ねて数ミリのいなごは稲の葉裏に隠る



稲作も代
(だい)が替はりて若きらは出勤前に田を見て廻る


稲作の代が替はりて農道に会ひても言葉交はすことなし



後ろの二句は、書き出し部分の似ているものが並びました。
最後の句、ちょっとさびしそうですね。
だんだんとこういう風になっていくものなのでしょうか。
母58歳の時の作品です。


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Sat.

色優しきに近づけば


(くず)の花色優しきに近付けば地を這ふ蔓(つる)はロープの如し


葛の花
写真は季節の花300さんからお借りしています。ありがとうございます。


母58歳の時の作品です。


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Sat.

すいすいと


すいすいと韮
(にら)は茎立ち花咲きぬ晩夏の雨の過ぎし畑に


畑韮1  韮の花
写真は季節の花300さんからお借りしています。ありがとうございます。


母が58歳の時の作品です。


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Fri.

今日漸くに降る雨をみつ


水道の水が温
(ぬく)しと思ふ朝暦は今日を白露(はくろ)と告ぐる


野沢菜の種蒔き終へて白露とふ
(=という)今日漸(やうや)くに降る雨をみつ


夕暮れて雨となりたり今日蒔きし野沢菜の芽は揃ひて出でむ


野沢菜


ウィキペディアによれば、白露というのは、
「二十四節気の1つ。9月8日ごろ。およびこの日から秋分までの期間」だそうです。

順に、母が45歳、58歳、56歳の時の作品です。


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Fri.

かたむきし稲穂の上に


かたむきし稲穂の上に藁
(わら)よせて作りかけたる鳥の巣のあり


夜半
(よは)覚めて耳すませをり倒れ伏す稲打ちて降る雨を思へば



順に、母が37歳、55歳の時の作品です。


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Thu.

芋の葉に溜まりし露で


秋蒔きの種子買ひ揃へ畑打ちて炎暑しづむる雨来るを待つ



野沢菜を間引き終りて芋の葉に溜まりし露で指先洗ふ


里芋
写真はたんとの四季折々写真俳句さんからお借りしています。ありがとうございます。

母が50歳の時の作品です。



里芋の葉に溜まりては落つる雨囀
(さへず)りのごと畑に音たつ


里芋
写真は季節の花300さんからお借りしています。ありがとうございます。

母が55歳の時の作品です。


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Mon.

季節移ろふ狭間に居りぬ


台風の余波にて暑きこの夜更け鎮守の森の蝉時雨
(せみしぐれ)止まず



昼は蝉夜はこほろぎの声のして季節移ろふ狭間
(はざま)に居りぬ



故のなき腱鞘炎
(けんしょうえん)をかこちつつ夏過ぎむとす蜩(ひぐらし)の声



母59歳の最後の夏が過ぎようとしています。



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Thu.

あのねおばあちゃん!


離れ住む孫が電話にたどたどと幼稚園に兎いるよと告げぬ



クッキーの型抜きしつつ幼児
(をさなご)は作るよろこび一つ知るらし



意味もなく線引きゐたる幼児がこのごろ人の顔書きはじむ



「お」の付くと言へばすかさず
         おかあさん!と児
(こ)は叫ぶなり言葉あそびに



あのねおばあちゃん!で始まる児の電話
         今日はメガレンジャーの話にて終ふ



兄の子を詠んだものです。
母59歳、兄の子は3歳の頃でした。


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Tue.

立秋の


立秋の日の習ひにて夜明け前清流に水浴びし幼日
(をさなび)



立秋とは、去る8月7日でした。
またしても掲載時期を逸してしまいました。
母が58歳の時の作品です。


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Tue.

夫もわれも


年のせいと医師の言わぬは嬉しとて待合室に老ひ人溢
(あふ)


(つま)もわれも朝餉の後をいくつかの薬並べ飲む勤めのやうに


いつも元気と思っていた母も、
そんな風に薬を飲むようなことがあったのですね。知りませんでした。
父は、心臓を患っていたのと糖尿とで、何年も薬を服用していました。
母が59歳の時の作品です。


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Sun.

「下山事件」夏幾十度


新聞を読みそめし頃の記憶なる「下山事件」夏幾十度


母が55歳の時の作品です。

「下山事件」を、インターネットで調べてみました。
(以下の文章は、主としてウィキペディアからの抜粋です。)

「下山事件」 
1949年(昭和24年)7月5日朝、日本国有鉄道初代総裁・下山定則(しもやま さだのり)氏が、出勤途中に三越日本橋本店で失踪、翌日未明に常磐線綾瀬駅付近で轢断死体となって発見された事件。
戦後史最大の謎と呼ばれている。同事件から1ヵ月あまりの間に立て続けに発生した「三鷹事件」、「松川事件」と合わせて、国鉄の戦後三大ミステリーとも呼ばれる。

この年、母は11歳でした。



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Sat.

川にひととき水とたはむる


帰国せし幼児
(をさなご)は日々日本語に馴染むらしわれの言ふも聞き分く


二年ぶり帰国せし児
(こ)と山あひの川に一時(ひととき)水とたはむる



この年の6月に、私達一家はドイツから日本に戻りました。

帰国後に私が二人の子供達を連れて実家を訪れたのは、
7月に1週間ほどと、あとは8月のお盆の頃に1週間ほどだったかと思います。
私が母と最後に会ったのは、そのお盆の時でした。

一句目の「幼児」というのは、私の上の子です。あと2ヶ月で4歳になるという頃でした。
二句目は、母が亡くなってから「毎日歌壇(毎日新聞)」に掲載された句だったように記憶しています。
母59歳の、最後の夏でした。


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Fri.

河鹿鳴く声は


河鹿
(かじか)鳴く声はいつより絶えしかと亡父の嘆きし川に来て佇(た)



この川の写真がないかとインターネットで探してみたのですが、見つかりませんでした。残念!
母59歳の時の作品です。


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Wed.

ゴム風船の顔笑ひをり


(ふすま)ごしに笛吹くごとくとほりくる小児喘息の甥の寝息は


幼姪
(をさなめひ)去りて幾日かしぼみつつゴム風船の顔笑ひをり


泊り客去りし畳にねころびて常の生活の気安さにゐる


夏休みに親戚が泊まりに来た時のことですね。
母が33〜36歳の頃の作品で、ということは私は11〜14歳でした。
若かったですねー(笑)。


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Tue.

目的もなけれど


夏物の大安売りに集まりし人に混りてブラウスを買ふ


目的もなけれど歩み秋植ゑの球根買ひぬ祭の露店に


人ごみの中に母がいる、そんな風景を思い浮かべる時、私はついしんみりとしてしまいます。
順に母が59、58歳の時の作品です。


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Sun.

登る穂は


落つる汗袖に拭
(ぬぐ)ひて草引けば額に涼しき一陣の風


稲田


稲の穂の茂るばかりと見ゆれども根方太りて穂を育
(はぐく)める


登る穂は日に日に見えて梅雨明けの続く日差しに稲田かがやく


稲の花
稲の写真は季節の花300さんのサイトからお借りしています。


母が59歳の時の作品です。
最後の句に、「梅雨明けの日差し」とあります。
今は8月の下旬。もっと早い時期に掲載すればよかったです。

歌集「花咲く道」には、昭和45(1970)年から平成9(1997)年の27年間に渡る母の短歌作品を、時系列に収めてあります。私はいつも、歌集全体を眺めては、各年の作品から今の時期に合わせて歌を選んでいるつもりなのですが、どうしても見落としが出てきて、こんな風に時期を逸して掲載することになってしまいます。

今年2月に始めたこのブログ、約一年をかけ季節が一巡りする間に、ほぼ全ての作品を掲載できるかな、と思っています。これまでにほぼ半数を掲載できたあたりでしょうか。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。


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06:05 | 農作業 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
Sat.

生まれし子抱き


親切な人多しと言ふ異国にて二人目の子を生みし娘は


ドイツに移り住んで1年ほどした頃に、下の子が生まれました。



親切な異国の人に助けられ生まれし子抱き娘
(こ)は帰国しぬ


二年弱住んだドイツからまた東京に戻ることになりました。
ドイツで生まれた下の子が1才になるかならないかの頃で、
上の子は3歳半を過ぎていました。
母59歳の時の作品です。


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Fri.

百合ひと群は


夜もすがら雨の音して明けし朝百合ひと群は首傾
(かし)げ立つ


百合百合
                       花の写真は季節の花300さんのサイトからお借りしています。


母59歳の、最後の夏でした。


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